2017年11月22日にラグナスイート新横浜で開催された中国の電源メーカー「Moons’(ムーンズ)」社のセミナーに参加してきました。
セミナーではMoons’社のDALI電源、DMX電源、0-10V電源の紹介がありましたが、DALI電源について報告をしたいと思います。
DALI電源 Iシリーズに加えSシリーズが2018年に新発売
Moons社のDALI対応電源は「Iシリーズインテリジェント電源」のラインナップでしたが、今回新しくSシリーズが2018年から発売になるとの発表がありました。
「Sシリーズインテリジェント電源」は、DALI電源を設置する上で「これって使いづらいよぁ」と思っていることを電源側で解決するような機能が追加されており、Moons’社が「現場で使いやすくしたらどうしたらいいか?」を常に考え製品に反映させている姿勢を強く感じる、そんな製品でした。
ということで、まずは「Iシリーズインテリジェント電源」からご紹介します
Iシリーズインテリジェント電源
「Iシリーズインテリジェント電源」は既に日本国内で使用するための「PSE」を取得しており量産販売されています。
ポイントとしては下記3点。
- 外部サーミスタ(熱電対)をサポートしており器具LED側の温度上昇に電源出力をコントロールできる機能を持つこと
- 0.1%調光ができること
- DT8、いわゆるDALI2に対応していること
2017年11月現在でこの3つを同時に実現しているPSE取得した電源メーカーは他にありません。
↓ 関連記事
国内で使えるPSEを取得したDALIドライバーを販売しているメーカー一覧
Sシリーズインテリジェント電源
こちらが今回新しく発表された「Sシリーズインテリジェント電源」。
Iシリーズと同じ機能はもちろん備わっています。
- 外部サーミスタ(熱電対)をサポートしており器具LED側の温度上昇に電源出力をコントロールできる機能を持つこと
- 0.1%調光ができること
- DT8、いわゆるDALI2に対応していること
それに加えて大きなポイントとしては以下の4点。
- ファームウェアアップグレード
- NFC近接通信機能
- 12V補助電源出力
- 15V DALI電源出力
それぞれ紹介しましょう。
ファームウェアアップグレード機能
さらっと説明してたんですけど、Moons’の電源はファームウェアをアップグレードする機能を持っています。
これまでのLED電源がどれだけファームウェアを納入後に更新することができたのか気にしていなかったのですが、これってすごいことではありませんか?
というのも、ここ最近、調色をつかってサーカディアンを行う照明器具が各社から発売されていますが、LEDは省エネ性能よりもデジタルで制御されることで実現できる付加価値が重要になってきています。
DALIの場合はTYPE8を採用することにより、調色やフルカラーコントロールがより現場にて使いやすくなります。
↓ 関連記事
DALI2 TYPE8を試してDALIコマンドのチェックをしてみた
このType8と同じように今後新しい機能がDALIに加わった場合、従来は新しい機能を備えた照明の器具ごと交換することが必須でしたが、ファームウェアが更新できれば、既存の照明器具のままで電源のアップデートさえできれば新しい機能が使えるという利点があります。
それだけでなく、ファームウェアを更新することを想定して、DALI信号線をそのまま使ってそれぞれの電源をアップデートできるようになっているのです。つまり、1台づつアップデートの専用線をメーカーの端末に接続して更新するといった手間がかかりません。
これって、私達が普段つかっているスマートフォンやパソコンなどでは当たり前のことですが、照明器具(電源)でこの機能は驚きです。というか、数年したらこれが当たり前になるかもしれません。
NFC近接通信機能
Moons’の電源は専用端末とソフトウェアを使うことで、出力電流やmin調光レベル、色温度範囲などを設定を行うことができます。従来は有線で接続する必要があったのですが、Sシリーズからは非接触のNFC(近距離無線通信)を使って行えるようになりました。
他社ではPHILIPSのXitanium(サイタニウム)の一部のラインナップがこの機能を持っています。
12V補助電源出力
DALIのマスターやセンサーなど、DALI BUSからの供給で動くものは別途電源を用意する必要はないのですが、それなりに機能をもっているマスター(スイッチ)などは、別途電源を必要とするものが多いです。
たとえば、こちらの記事で紹介しているSunricher社のTYPE8のマスター(スイッチ)は、別途12Vから24Vの直流電源を必要とします。
DALI2 TYPE8を試してDALIコマンドのチェックをしてみた
こういった場合はしょうがないのでLED電源とは別に12VDCの電源を用意するのですが、LED電源から12V電源が取れるとその必要がありません。
この機能は本当に、現場の方のあったらいいなという声が反映されたのだと思います。
15V DALI電源出力
今回、最も衝撃だったのはこの「15V DALI電源出力」機能。
DALIはネットワークを使えるようにするためにLEDの電源の他にDALI BUS電源というものが必要になります。
↓ 関連記事
第1回スターターキットの接続/ゼロから始めるDALI制御
Sシリーズは、このDALI BUS電源の機能をもっているとのことです。
一般的なDALI BUS電源の出力電流が250mAに対してSシリーズの電源は100mAなので、従来のDALI BUS電源の代わりになるとまでは行きませんが、小規模の物件で別途DALI BUS電源を用意しなくていいのはとても便利だと思います。
ただ、1つのDALIネットワークにDALI BUS電源は1台という決まりがあるので、もしSシリーズのDALI BUS電源が同時に使われた場合にどうなるかは、Moons’の方に確認中です。
以上が新しく発売されるSシリーズのポイントでした。
その他のトピック
信号線の太さと距離
信号線の太さ(断面積)とケーブル長について説明がありました。
0.1%調光の利点
Moons’のDALI電源の大きな特長に最低が0.1%がありますが、正直な話、オフィスのようなエリアではそこまでの調光レベルは求められていないので、必要とされるエリアは限られると思っていました。
しかし、調色やフルカラーコントロールが、オフィスにも導入されるようになると、0.1%調光ができることは大きな意味を持ちます。
それは、色温度や色度座標の広い範囲に細かく対応できること。
上の表はドライバーのminレベルが10%,5%,1%,0.1%の時に、2500Kと6500KのLEDを組み合わせて調整できる色温度の範囲です。
例えばminが10%の電源では、最低は2500Kとなりますが、その次の色温度は2900Kになります。これは、最低でも6500KのLEDが10%で光ってしまうためです。
それが、minが0.1%だと、最低は2500Kで変わりないですが、その次は2504Kとより2500Kに近い色温度になります。
このグラフはそのことを表しています。
つまり、明るさとしては最低が5%でも問題の無いオフィス物件であっても、調色という機能が求められると自然な色温度の変更が必要となり、Moons’社の電源のように最低0.1%といった機能が大きな意味を持ちます。
DALI制御装置互換表
Moons’社において、DALIマスターの検証をおこない、正しく動作したメーカーの商品が紹介されました。
WAGO、Tridonic、Helvarといった主要メーカー以外に、弊社が販売するiLumtechのDeeBridgeも検証いただきご確認いただいていおりました。 感謝!
まとめ
以上、Moons’社のセミナーについてご紹介しました。
個人的な感想としては、Moons’社のDALI電源は他社の2歩か3歩先を進んでおり圧倒的に高性能だと感じました。
まだまだ日本のDALI普及は小さいものですが下記の記事で紹介しているように、現在の時代の流れからするとDALIは消去法で確実に照明制御の標準になると考えています。
↓関連記事
DALIは確実に照明制御の標準になります。でもそれは消去法で。
現在DALIに取り組んでいる方はもちろん、DALIに興味をもっている方も、次の世代の照明はどんな技術が盛り込まれるのかを、Moons’社の電源でチェックされることをおすすめします。
また、その時に必要となるDALIの機材や使用方法などは、弊社でもサポートしておりますので、どうぞお気軽にお声がけください。