最近、DALIとDALI2の違いについて問い合わせを受ける事が増えてきました。
2020年2月にこちらの記事でDALIとDALI2の比較を紹介しましたが、改めてDALI2についてDiiAの資料がありましたので和訳していきたいと思います。
和訳する資料はこちら
1711_technical-note-dali-2-the-new-standard.pdf
ちなみに、過去のDiiAの資料は時間がたつとリンク先が削除されているケースがあるので、オリジナルのPDFはダウンロードしておくことを強くおすすめします。
概要
DALIプロトコルは、1990年代後半に最初のドラフトが作成され、その後何度も改訂されながら進化してきました。その結果、DALI規格IEC 62386のバージョン2が完成し、これが通称「DALI-2」と呼ばれています。
DALIの重要な理念は相互運用性であり、DALI-2はオリジナルの規格に欠けていた部分を補うものです。DALI-2は新機能を追加し、制御機器(コントローラー)の標準化を導入しています。
DALI-2の改善点と追加点
Part 101 & 102を再構築
新しいバージョンの規格では、いくつかの新しいコマンドや機能を含む多くの改良が行われています。また、IEC 62386では初めて制御機器の標準化も含まれています。
これに対応するためには、Part101と102に変更を加え、Part101のシステム要件とPart102の制御装置要件を明確に分ける必要がありました。また、規格の新しいパート103では、制御装置の一般的な要件が導入されました。
Part101はシステムについて、Part102はコントロールギアについての項目。コントロールギアというのは、DALI対応していないLED器具をDALI対応するためのDALIコンバーターといわれるデバイスのことです。
Infineon-Application_Lighting_Digital_Addressable_Lighting_Interface_(DALI)_Control_Gear-TR-v01_00-EN.pdf
- バスのタイミングに関する要求がまとめられました(Part 102とPart103の前のドラフトから)シングルマスターやマルチマスターなどの制御機器が可能になりました
- 絶縁と接地の要件が変更/追加された
- 停電時の動作については、短時間の停電と長時間の停電を含めて定義されました
- バスパワーサプライとアドバンスド・バスパワーサプライのスタートアップのタイミングが定義されました
- 信号の定格電圧:現在、トランスミッターのハイレベル電圧に対して最低10V
- バスパワーサプライを搭載した機器を除き、インターフェースは極性の影響を受けないこと
- デバイス・マーキングの要件が変更されました
- バスパワードユニットが定義されており、バスパワードコントロールギアとコントロールデバイスが可能です
- 信号の立ち上がり・立ち下がり時間、信号のタイミングの改善・明確化
- 24ビットフレームが定義され、20ビットおよび32ビットフレームが確保されています
- マルチ・マスター・タイミングの定義
- 1つのバスユニット内で複数の論理ユニットを使用可能になりました
- Part 101にテストシーケンスが追加されました
- フェーディングのルール/タイミングの明確化
- 変数 lastActiveLevelと、コマンド “GO TO LAST ACTIVE LEVEL”が追加になりました
- フェードタイムの延長(100msから16分までのフェードに対応)
- 操作モードでは、メーカー独自の操作が可能で、通常の操作に戻るための標準的な方法が用意されました
- 新しいWRITE MEMORY LOCATION – NO REPLYコマンドを実行してメモリバンクのリセットを行います
- “SAVE PERSISTENT VARIABLES”コマンドが追加されました
- QUERY LIGHT SOURCE TYPEが追加されました
- PINGコマンドが定義されました。しかし、制御機器では無視されます。シングルマスターの検出が可能)
- 物理的な選択が削除されました
- パワーオンおよびスタートアップのタイミングが更新され、明確になりました
- テストシーケンスに多くの追加・改良を施しました(DiiAメンバーに公開)
コントロールデバイスの標準化。アプリケーションコントローラと入力デバイス
Part103「一般要求事項-制御機器(Control Devices)」の発行により、制御機器の具体的な部品の規格化が進みました。規格の一部は、最初の4つの入力装置について公開されている。これらは、システムに情報(入力)を提供する制御装置の一種である。また、アプリケーションコントローラーと呼ばれる別のタイプの制御機器は、入力機器やその他のソースから提供される情報を使用して 判断したり、制御装置にコマンドを送ったりすることができます。
アプリケーションコントローラは、シングルマスターまたはマルチマスターとして動作します。両タイプのバス通信の要件は、パート103に記載されています。入力機器はマルチマスターですが、アプリケーションコントローラから単純にポーリングされるモードでも動作可能です。
Part103のハイライトは以下の表の通りです。
- シングルマスターとマルチマスターが可能
- 入力デバイスの定義されました
- アプリケーションコントローラが定義されました
- 24ビットフレームフォーマットの定義されました
- Part101にタイミングが定義されました
- アドレッシングモードの定義(64個のショートアドレス、32個のグループアドレス、インスタンスアドレッシング、インスタンスグループ、フィーチャータイプアドレッシング)
- イベントが定義されました
- メーカー固有のモードが定義されました
- メモリバンクが定義されました
- アプリケーションコントローラを有効/無効にするコマンド
- 静止モードが定義されました。(コントロールデバイスがフォワードフレームを送信しない)
- イベントの優先順位が定義されました
後方互換性
DALI-2で導入された変更点は、既存の制御機器をDALI-2対応の制御機器に交換する場合や DALI-2に準拠した制御機器をDALIバージョン1の制御機器で使用する場合の相互運用性の改善を目的としています。この後方互換性については、DiiAのウェブサイトに記載されています。(確認しましたがリンク切れていました)
現状とロードマップ
現在の公開仕様
既存規格の新版 – Part101(システム)とpart102のバージョン2 (制御機器)は2014年11月に発行され、同時に新しいパート103も発行され、制御装置の標準化を初めて導入しました。
– 301から304- 2017年2月に発行されました。著作権のため規格を共有することはできませんが、ほとんどの国の国家標準化機構やIECウェブストアから購入することができます。
公開予定されている仕様
現在、いくつかの新しいPartが書かれています。これらには、制御機器の機能拡張(フィードバック コントロールデバイスの機能拡張)などがあります。制御機器用の新しいPartも書かれており、負荷軽減/需要応答、ランプやギアの熱情報、電力測定などの機能が含まれています。Part207はDALI-2でアップデートされます。
テスト手順とテストシーケンスソフトウェア
DiiAの技術・認証ワーキンググループ(T&C WG)は、すべてのPartのテスト手順を管理し、DiiAメンバーにリリースする前にテストシーケンスソフトウェアのベータテストと承認を行います。DiiA正会員は T&C WGに参加することができます。
まとめ
以上、DiiAのサイトにある1711_technical-note-dali-2-the-new-standard.pdfの資料の翻訳をしました。
*このPDFがいつ公開されたのか確認できませんでした。
私が個人的に解釈しているDALI2のポイントとしては、
1.違うメーカー同士の機器が問題なく動作するようにトラブルが起こりやすい部分を明確化した
2.DALI信号を送って照明器具を制御する機器(アプリケーションコントローラー)に関する規格を明確化した
3.新しく登場したデバイスの追加や、便利なDALIコマンドを追加した
といったところでしょうか。
引き続き調査していきます。