国内では各器具メーカーが独自の照明制御方式でラインナップをもっておりますが、信号線が必要なく無線で制御できることや、タブレットやスマートフォンで独自アプリケーションを利用することに使いやすいメリットがある一方、リスクもあります。
今回はそのリスクについてご紹介したいとおもいます。
スーパーカーとスマートフォンを使った鍵の例
照明とは直接関係ありませんが、汎用のものではなく独自のインターフェースでメンテナンスすることを選択したマクラーレンF1と、物理的な鍵をつかわず、スマートフォンから開け閉めできる鍵のサービスを提供したニーヨンロックという2つの事例をご覧ください。
マクラーレンF1のケース
2016年5月にネット上で話題になった「5億円以上の価値を持つ「マクラーレン・F1」のメンテナンスには20年前のCompaq製ノートPCが不可欠と判明」というニュースをご存知でしょうか?
http://gigazine.net/news/20160506-mclaren-f1-need-compaq-old-pc/
マクラーレンF1は汎用のインターフェースを用いずに特定機種でのみメンテナンスできるような仕様で作ってしまった為、メンテナンスをする為にはCompaq社のLTE 5280 laptopという20年位上前のノートパソコンが必要不可欠だというのです。
現在でもマクラーレンF1は5億円をくだらない価格といわれておりますが、大昔のCompaqのパソコンを用意できなければ、メンテナンスができないという状況だそうです。
246Padlock(ニーヨンロック パドロック)のケース
株式会社電通ブルーが提供していた「246Padlock(ニーヨンロック パドロック)」というサービスがありました。
「鍵穴のない南京錠」というキャッチフレーズで、物理的な鍵を必要とせず自分がもっているスマートフォンのアプリから施錠や解錠ができるという先進的な商品だったのですが、2016年6月にこのサービスは終了となりました。
終了にともない株式会社電通ブルーは2つのアナウンスをしました。
ひとつは、サービス終了日を過ぎると「246Padlock」は解錠できなくなる、つまり、鍵が開けられなくなるということ。次に本体代金相当額(税込価格)を返金するということ。
実はこういったスマートフォンを使ってアプリから鍵を開けたり締めたりするために、方式によっては独自でサーバーを準備する必要があり、サービスを維持する為にはコストがかかります。
想定したとおりにユーザーが増えればその費用もまかなえますが、そうでなかった場合はそのサービスを提供する限り永遠に運営費用がかかります。
さらにはスマートフォンのOSがアップデートするごとに、専用のアプリもアップデートすることが求められます。
当然、スマートフォンアプリのアップデートには安くても数百万円単位のお金が必要で、それが毎年、さらにはiPhoneやAndroidそれぞれのアプリに対応することが求められます。
「246Padlock」の場合は「鍵」という開かなくなったら致命的なものであることから、サービス終了にあたって全額返金という苦渋の判断をされたのでしょう。
マクラーレンF1と246Padlockの例は照明業界に関係ないか?
現在、照明器具メーカー各社が提供している照明制御システムのサービスは、端末側としては、専用の端末を利用するもの、顧客がもっているスマートフォンにアプリをインストールして使うものがあります。また、メーカーの運営するサーバーにネットから接続をするようなものもあります。
なので結論から言うと、独自の端末を利用する場合はマクラーレンF1と同じことがおこる可能性があり、顧客がもっているスマートフォンにアプリをインストールする方式や、メーカーが運営するサーバーに接続するような場合は、「246Padlock」と同じようなことが起こる可能性があります。
つまり、紹介した2つの事例は、私達照明業界の人間にとって、とても他人事とは思えない、明日は我が身とも思える恐ろしい話なのです。
私達が気をつけておきたいこと
汎用の方式ではなく、独自の方式で照明制御システムを提供する場合、システムの開発だけでなく運用やメンテナンス、そして継続性も含めて自社にその全ての責任がかかってきます。
気をつけるべきことは、
- スマートフォンやタブレットなどの同じ端末を10年後に入手するのは簡単ではない
- 専用アプリをユーザーのスマートフォンやタブレットに入れる場合は、アプリのアップデートのコストが継続的にかかる
- 自社が提供するサーバー(クラウド)をつかって照明制御のシステムを運営することは、今後も継続的にその費用がかかる
といったことがあります。
では、どうすればいい?
このブログではDALIを推しているので、つまりそういうことなのですが、DALIのような規格がオープンでいろんな会社が商品やサービスを提供している制御方式を選ぶとそれらのリスクは回避することができます。
専用アプリの問題については、アプリからDALIを制御するためにゲートウェイをつかっているはずなので、そのゲートウェイの仕様を公開したり、アプリではなくブラウザから開くウェブアプリケーションという方法にすると、OSのアップデートに対応する必要も少なくなります。
そういえば、先日プレスリリースのあったアイリスオーヤマ社のシステムがウェブアプリによって制御できると書かれていましたが、仕様の詳細がわからないのでまだなんとも言えません。
でも、専用アプリじゃなくてウェブアプリケーションとして提供するのは正解だと思います。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000019955.html
まとめ
以上、マクラーレンF1とニーヨンロックの話から、現在各社が提供している独自の照明制御サービスについて気をつけておきたいことをご紹介しました。
もしかしたら、10年後20年後の対応方法をすでに考えられているかもしれませんが、そういった情報が分かり次第、またご紹介したいと思います。