この度、スマートライト株式会社で別置き型PSE取得のDALI BUS電源を発売させていただくことになりました。現在、いろいろ準備中で正式な発売は2020年3月となる予定です。
実はこのDALI BUS電源はずっと私自身が欲しかった商品でした。そして、多くの方のご協力をいただき、ようやく世に出すことができるところにたどり着いた、本当にマイ・ドリームがカタチになったといっても過言ではありません。
さらに、このDALI BUS電源が世にでることで日本のDALIの状況が大きく前進するきっかけになります。後に過去の出来事を振り返って「2020年という年がDALIにとって大きなターニングポイントだった」と語り継がれることになるとおもいます。というか、そうします!そのぐらい、大きく世の中を変える力を秘めた製品なのです。
今日はこのDALI BUS電源についてと、これが出ることがどうして日本のDALIの状況が大きく変わるきっかけになるのかの説明をしたいと思います。
DALI BUS電源とは?
まずはそもそも「DALI BUS電源」とは何か?について説明します。
かんたんに言うと、
DALIのネットワークを利用可能にするための電源
です。
よく、LEDを点灯させるための電源でDALIに対応しているものを指す【DALI電源】と混同されますがそれとは全く違います。
また、未経験者がDALIを導入するときにうまく動かない時は、DALI BUS電源が用意されていないケースが多々あります。
DALI BUS電源が用意されているか確認しよう!
ちなみに、【BUS(バス)】とい言葉がつかわれていますが、Wikipediaによると、
バス (英: bus) とは、コンピュータの内外、各回路がデータを交換するための共通の経路を指すコンピュータ用語である。
と書かれているとおり、BUSとは【データを交換する共通の経路】で、そこに供給する電源がBUS電源となり、それがDALI用だからDALI BUS電源という名前になります。
こんな感じです。左上の制御盤の四角の中にあるのがDALI BUS電源です。
もっとシンプルにすると
こんなふうになります。
現在流通しているDALI BUS電源との違い
さて、今回話題にしている「DALI BUS電源」ですが、現状、国内で調達できるのは下の製品写真のようにDINレールに取り付けるタイプのものです。
このタイプは制御盤の中で使うことを目的にしているので、この製品を使うためには制御盤を制作しその中に設置する必要があります。
一方、上の写真は菱形PSEを取得した【LED DALI電源】です。DALI BUS電源ではありません。
このタイプであれば天井裏に設置することができますが、先程のDALI BUS電源はPSEを取得していないのでそのようなことはできません。
こちらが、今度発売するDALI BUS電源です。
先程の既存のDALI BUS電源よりも、菱形PSEを取得したDALI電源に形状は近くなっています。
ポイントとしては、
- 菱形PSEを取得
- 電源部にFケーブルを端子に挿せる
- そのままで設置可能
以上、3点です。
制御盤に入れるタイプの問題点
従来のDALI BUS電源は、上図のように制御盤を制作しその中に収める必要がありました。
それによって、
- コストが高くなる
- 制御盤を設置する空間が必要
- 器具とスイッチ以外に要素が増え複雑になる
といった問題が発生し、結果的に
- DALIは高い
- DALIは難しい
- DALIは必要ない
と考えられ、特別な物件以外ではなかなか導入しずらいというのが、DALIの一般的な認識とされてきました。
PSE付きDALI BUS電源の登場でどうなる?
2020年3月にPSE付きのDALI BUS電源の販売を開始します。
すると、今まで制御盤の中に設置していたDALI BUS電源は照明器具と同じように天井裏に設置することができ、
イメーぞ的にはこうなります。
でも、これだけだとよくわからないので、PWMによる調光と比較してみましょう。
PWM調光との比較
たとえば、こんなふうに調光する案件があったとします。
PWM調光を使えば、器具のグループごとにコントローラーから信号線をつないで上図のような信号線の回路となります。
ただし、1度施工したら器具のグループの変更などは、再度、信号線をつなぎなおす工事のやりなおしが必要となり現実的ではありません。
また、信号線はコントローラーごとに接続する必要があり、信号線の長さも必要です。
では、これを従来のDALI BUS電源を使った方式にするとどうなるかというと、
こうなります。
でも、制御盤をあらたに設けるとなると、予算的にも手間的にPWMとの差がが発生してしまいます。
では、「PSE対応DALI BUS電源」がつくと、
こうなります。
ポイントとしては、
- 制御盤が必要なくなり、照明器具と同じ場所(天井裏)にDALI BUS電源を設置できる
- PWMだと3グループ分必要だったコントローラーが1台で対応可能になる
- 信号線ですべてのコントローラーと照明器具を接続。複線部がなくなり施工が楽になる。
ということになります。
さらに、PWMでシーンコントローラーをつかうようなケースはどうなるでしょうか?
PWMでシーンコントローラーを使う場合
PWMでシーンコントローラーを使う場合は、器具のグループごとに信号線も分ける
必要があります。
DALIでシーンコントロールを行う場合、実は先程と同じ構成で可能です。
DALIのコントローラーからシーンを呼び出す信号を送るので、グループごとに調光するのも、あらかじめ設定されたシーンを呼び出すのも、DALIであればやっていることはあまり変わらないのです。
DALIコントローラーのラインナップが増えてきた
実はPSE取得済みのDALI BUS電源がリリースできると、DALIが一気に普及するもうひとつの要素にDALIコントローラーのラインナップがあります。
DALIコントローラーは、上の写真のようないわゆるスイッチなのですが、以前はこのコントローラーのために12VDCの電源が必要なものが多かったのですが、最近ではDALI BUS電源だけで使えるようなDALIコントローラー(DALIスイッチ)が増えてきました。
つまり、DALIの信号線でつなぐだけで使えるDALIスイッチです。他に電源を供給する線を接続する必要はありません。
また、こういったシンプルなDALIスイッチもあります。
こちらは、4グループ(回路みたいなもの)を設定し、1回ボタンを押すと点灯・消灯、ボタンを長押しすると調光といった使い方ができるスイッチです。
それ以外にも、調色ができたりRGBの器具をスイッチで制御できるDALIコントローラーもありますので、PSE取得DALI BUS電源の組み合わせで、明るさだけでなく色温度、フルカラーを制御する照明を普通の照明器具をいれる感覚で空間に導入することができます。
こちらのDALIコントローラー(スイッチ)類もスマートライトにて販売しております。
PWMとDALI、コスト的な違いは?
これからDALIが完全に普及するために、コストの問題は避けられません。
少なくとも、これまでPWM調光を使っていた現場と比べて、それほど大きなコストの差が無い状態にする必要があります。
まだ具体的なコスト計算はできないのですが、PWMとDALIのそれぞれで必要な機器のリストをつくり、どれぐらいのコスト差がでそうかのイメージを掴むようにしました。
以下は、PWMとDALIについて、単純な調光をする例、シーンコントローラーを使った例で必要となる項目をリストにしました。
調光だけのケース
PWM調光 | DALI調光 |
---|---|
PWM対応 照明器具 |
DALI対応 照明器具 |
コントローラー3台 | コントローラー1台 |
DALI BUS電源1台 | |
コンフィグレーション費 |
リストを検証してみましょう。
PWM対応とDALI対応の照明器具の価格は、たとえばコイズミ照明さんは同じ価格になっていることを考えると、今後、他の照明器具メーカーもPWMとDALIの照明器具の価格は同じになってくるでしょう。
それ以外については、PWM調光がコントローラー3台必要なのに対して、DALIは1台で済みます。
しかし、DALIは他にDALI BUS電源の費用とコンフィグレーション費が必要となります。
従来は、ここに制御盤の費用が入ってきたので価格差はかなり出てしまいましたが、この構成であれば、DALI BUS電源とコンフィグレーションの費用がどれほどにできるかで、PWMからDALI器具への移行が現実的なものになります。
シーンコントローラーを使用するケース
PWM | DALI |
---|---|
PWM対応 照明器具 |
DALI対応 照明器具 |
シーンコントローラー1台 | コントローラー1台 |
DALI BUS電源1台 | |
コンフィグレーション費 |
照明器具の単価については同じと考え、それ以外の費用で比較します。
PWMはシーンコントローラー1台必要なのに対して、DALIはコントローラーが1台、他にDALI BUS電源の費用とコンフィグレーション費が必要となります。
シーンコントローラーにどこまでの機能を求めるかにもよりますが、単純なPWM調光例と比較すると、シーンコントローラーを必要とする現場では、価格的にもDALIのメリットが出せそうです。
PWMとDALIについて、PSE対応DALI BUS電源を使った考察
以上、PWMとDALIのコストの違いがどれだけでそうかを必要な項目を並べて検証しました。
これまでは小規模の現場では、コストの問題で検討の対象にならなかったDALIを使ったシステムの構築は、このPSE取得済みDALI BUS電源の登場で比較検討に値するものになるはずです。
ただし、これをすすめるにあたって一番の問題は、DALIのコンフィグレーションを出来る人材が少ないこと。それによってDALIコンフィグレーション費用が小規模の物件であっても高くなってしまうことが予測できます。
特に地方の現場で交通費と宿泊費をかけてしまうと、費用はさらに嵩みます。
それも、私の中では解決したいと考えています。
照明制御の技術者の為のスマートライト・エンジニア・ネットワーク
2020年はDALIを中心に照明制御のスキルをもった技術者の発掘・育成・組織化をします。
以前、電気工事屋さんにDALIのスキルを覚えてもらうことを考えていましたが、それをさらに技術者よりにしようとしています。
これについては、あらためて紹介する予定です。
また、あわせて、DALIのコンフィグレーションを覚えたい!という人に向けて、
- トレーニングキット
- 動画学習教材
もリリースする予定です。
日本全体で、今後ますます人材不足が慢性していく状況ではありますが、一方、人生100年時代というようなことも言われています。なので、人々に求められ、感謝され、やりがいのある、そんな体制づくりを、PSE取得DALI BUS電源とともに取り組んでいきます。
まとめ
今まで点で活動してきたことが、線になり、そして2020年は面となって大きなムーブメントにしていきます。
この記事を読んで、私のことを、ちょっと変なヤツだけどなんか面白そう!と思ってしまった方は、ぜひ、お気軽にご連絡ください。
一緒に、楽しくてやりがいのある、新しい時代を切り開くことをやりましょう!