DALIは64台までの器具にアドレスを振り1台ごとに制御することができるのですが、実は1台の器具が2つのアドレスをもっているのをご存知でしょうか?
それぞれDAPとIAPという名前なのですが、本日はその2つのアドレスについてご紹介いたします。
DALIにおける信号の送り方
[PHILIPS Introduction to DALIより引用]
アドレスについて理解を深めるために、まずはDALIにおける信号がどのように送られているかを解説します。
DALIのコマンドは信号線を通して[Where to:コマンドをおくる対象]と[info:コマンド]の内容がデジタルデータでおくられます。
この[Where to]が個々の器具やグループなど、どの器具に対してコマンドをおくるのかを示し、[info]のところで、消灯や点灯、調光などの命令をおくります。
コマンドのサンプル その1
では、DALI学習スターターキット(拡張版)とMasterConfigratorのCommand Administratorを使いながらDALIのコマンドとアドレスについてみていきましょう。
まずはAddressing wizardをおこないDALIの最初の設定を行います。
このように認識された器具が表示されました。次にToolsのメニューからCommand administoratorを立ち上げます。
Command administoratorの画面では、Operating areaはallにチェック、Definitionは RECALL MAX LEVELを選択し右下の[Send command]というボタンを押します。
全部のLEDが点灯しました。
これを表にするとこんなふうになります。
Where to | Info |
---|---|
all | RECALL MAX LEVEL |
次に、LEDを消灯しましょう。
DefinitionではOFF を選びます。
LEDが消えました。
表にするとこちら。
Where to | Info |
---|---|
all | OFF |
ここでCommand administratorツールの左したに表示される[Data to send]という表示をみてください。
0xff05とでていますよね。
RECALL MAX LEVELの時は、0xff05、OFF の時は、 0xff00、となっていました。
これがDALIの信号線におくられるデータで、全部消灯( all OFF )のときは 0xff00、全部最大点灯( all RECALL MAX LEVEL)のときは 0xff05となります。
データのうち、ffが[Where to]にあたり全部の照明器具の意味で、00や05が[info]にあたり、00が消灯(off)、05が全点灯(RECALL MAX LEVEL)になります。
先程の表に追加すると、OFFにする時は
Where to | Info |
---|---|
all | OFF |
ff | 00 |
RECALL MAX LEVELにする時は
Where to | Info |
---|---|
all | RECALL MAX LEVEL |
ff | 05 |
となっています。
どうでしょうか、なんかDALIの姿が見えてきたような気がしませんか?
コマンドサンプル その2
次は、Command administratorツールからOperating areaで[address]のところにチェックをいれ0の数字を入れます。Definitionには、RECALL MAX LEVELを選びます。
結果はこのように、赤色のLEDが点灯しました。
このときのDATA to sendの値は 0x0105です。これを表にすると
Where to | Info |
---|---|
0 | RECALL MAX LEVEL |
01 | 05 |
では、この赤いLEDを消しましょう。OFFにしてみてください。
赤色LEDは消えましたね。
この時のDATA to sendの値を表に追加します。
Where to | Info |
---|---|
0 | OFF |
01 | 00 |
先程の全部の器具を点灯させたり消灯させたりするときは、Where toのデータがffでしたが、今回は1となっていました。
では、別の器具を個別に制御すると、ここがどのように変化するでしょう?
コマンドサンプル その3
今度はAdressを1にしてRECALL MAX LEVELにしてみます。次のようにしてください。
結果は緑が点灯しました。
DATA to sendの値を見て表にします。
Where to | Info |
---|---|
1 | RECALL MAX LEVEL |
03 | 05 |
緑を消します。
表にするとこちら
Where to | Info |
---|---|
1 | OFF |
03 | 00 |
次はAdressを2にしてRECALL MAX LEVELにしてみます。
今度は青が点灯しました。
表はこちら
Where to | Info |
---|---|
2 | RECALL MAX LEVEL |
05 | 05 |
青を消します。
表はこちら
Where to | Info |
---|---|
2 | OFF |
05 | 00 |
最後にAdressを3にしてRECALL MAX LEVELにしてみます。
6500Kの白いLEDが点灯しました。
表はこちら
Where to | Info |
---|---|
3 | RECALL MAX LEVEL |
07 | 05 |
消灯します。
表はこちら
Where to | Info |
---|---|
3 | OFF |
07 | 00 |
アドレスを整理
まずは各LEDについてどのアドレスが赤や緑かなどがわかるように、Renameして名前を変更します。
それぞれについて、アドレスをまとめてみました。【Operating areaに入力するアドレス】というのが、Command administoratorで入力するアドレスで、【DATA to sendに表示されるアドレス】が、Operating areaに入力した結果表示されるアドレスです。
これをみると、Operating areaに入力するアドレスとDATA to sendに表示されるアドレスがずれています。
これはどういうことでしょう?
2つのアドレス DAPとIAP
これがDALIが持っている2つのアドレスというものです。
DALIにはアドレスをもつ一つの機器にたいして、DAPとIAPという2種類のアドレスが設定されます。
- DAP : Direct Arc Power Control
- IAP : Indirect Arc Power Control
DAPはDirect Arc Power Controlの略で、直接出力を制御するという意味、IAPはIndirect Arc Power Controlの略で、間接的に出力を制御するという意味です。
Command Administratorを使う場合は、DAPもIAPを気にすることなく、そのままアドレスを入力すれば、DAPかIAPのどちらにするべきかはソフト側で判断してくれて、DATA to sendのアドレスは変更してくれます。
実はこれ、コマンドの種類でどちらのアドレスを使用するかがはっきりしていて、DAPは指定した明るさで点灯しろという命令を送る場合、それ以外はIAPのアドレスを使うことになっています。
なので、最初のコマンドの説明で紹介した、OFF (消灯しろ)とか、RECALL MAX LEVEL(全点灯しろ)というのはIAPのアドレスになるのです。
まとめ
以上、DALIの機器がもっている2つのアドレスの違いについて説明しました。
今までの照明制御とDALIの大きな違いは、このコマンドで照明を制御するというところ。つまり、IAPのアドレスに送っている部分です。
指定した照明機器がどれだけの明るさで点灯するかというDAPに送る方式は、舞台照明で使われるDMXもこの形式になります。
DALIのとっつきにくさは、そのコマンドで照明をコントロールするところで、これはプログラミング(コンピューターの言語によるもの)の概念を学ぶことでより理解が深まります。
なので、これからはDALIと合わせて、プログラミングの勉強方法なども合わせて紹介していこうと思います。